日本初のコンベンション型イベント、JMoFに参加する
日本で初めて行われたコンベンション。果たしてその結果は?
J-Mof
集合写真の撮影 |
今回は日本初のホテル一体型コンベンションイベント、Japan Meeting of Furries (以下JMoF)に参加した。
ホテル一体型コンベンションイベントとは、過去に本ブログで取り上げたようなイベント運営がホテルの(最低)一部分を貸し切り、参加者はホテルに寝泊まりしながらイベントを楽しむイベントのことである。日本に於いてこのような形態をとったイベントは未だかつて行われたことが無い。今まで日本で行われてきたイベントは単日開催か、連日開催でも夜はイベント会場が閉鎖されるのが当然だった。
日本国外では当然のように開催されるコンベンション。その多くに今まで参加してきたが、日本で行われるコンベンションとなると話は別だ。前例の無いこのイベントに、胸を躍らせ参加してきた。今回はそんなJMoFと、そこに集ったユニークな人々を中心に、レポートの形でお届けしたい。
いざゆかん彦根
富士山がよく見える
JMoFは日本の中心、琵琶湖とひこにゃんでよく知られる滋賀県、彦根で行われた。前回に引き続き東京に滞在している為、車で約6時間の旅路となった。
旅路は良好。途中の関ヶ原では路肩に雪がポツポツと降り積もっていたものの、関東地方は晴れ渡り、富士山も綺麗に見えた。
サービスエリアの食事は何故か美味そうに見える
サンルート彦根へ
今回イベントが行われたのは彦根駅から徒歩3分という類を見ない好ロケーションに位置するビジネスホテル・サンルート彦根。彦根城からも徒歩圏内で、ホテルのチェックインを前にして彦根城を観光する参加者も散見できた。
残念ながらゆるキャラVIPのひこにゃんには遭遇できなかった。だが街中にひこにゃんグッズやイラストが溢れていたのでそれだけでもお腹いっぱいになる。
この彦根というロケーションだが、関東からも関西からも絶妙な位置にあり、行幸として友達と一緒に遊びに来るだけでも十二分に楽しい。一緒に旅して、一緒に食事をし、一緒に夜を迎えるのは修学旅行にも似た雰囲気だ。
会場は二階、広々としたスペースが設けられた
JMoF、開幕。
JMoF開会式は12日(土曜日)の14時から行われた。主催者であるクリスケ氏の簡単な開会メッセージがあり、記念すべき日本に於けるコンベンション第一号が始まったのである!
いよいよ開幕!
コンベンションはホテルの2Fと3Fを貸し切って行われた。メインフロアである3Fでは撮影ブース・開会式を含む大きなイベントを行う部屋――「金亀」、物販コーナー、そしてお絵かきや談話を楽しむスペースが設けられた。
メインフロア「金亀」
撮影ブースにはプロ顔負けの撮影器具とカメラ・印刷機器が用意され、即席でネームカードを作って貰えた。「金亀」には掲示板も貼りだされ、参加者同士の交流に一役買っていた。
2Fには着ぐるみ専用の休憩スペース――ヘッドレスラウンジ、グループ撮影用の部屋・「八千代」、そしてプレゼンに使われた多目的ルームがJMoFの為に用意された。
イベント選り取り見取り
他のコンベンションの例に漏れず、JMoFでは様々なイベントが同時進行的に行われた。
キャラアピールコーナーでは、自分の持ちキャラを1分という限られた制限時間内で目一杯アピールする。参加者は皆、キャラに対する熱い情熱を迸らせ、ユニークに自身のキャラを紹介していく。その軽妙な台詞運びに、会場は大爆笑の渦に包まれた。
時間は一分! |
風船拾いでは、人が、ケモノが、入り交じりの熱い紅白戦を見せた。そのファンシーな名称とは裏腹に、「如何に相手の風船を殲滅するか」というダーティーな戦法が戦いの主軸となり、可愛いさとは裏腹にバーリ・トゥード(何でもあり)な闘いが繰り広げられた。
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レクリエーションイベント・風船拾いの様子 |
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風船拾いというよりは風船割りである |
なお、勝利は最後まで真面目に風船を拾っていた白チームが収めた。
こちらはトークショー。ラジオパーソナリティよろしくイベント主催者のクリスケ氏と皆の人気者・団十郎氏が着ぐるみにまつわる話で場を盛り上げた。特にラジオ内容はリアルタイムでネットにブロードキャストされ、JMoFに参加していない人たちにも場の空気を提供するのに一役買った。
それ以外にも雑談用の掲示板があり参加者同士が色々とメッセージを書き記していた。
その他、(残念ながら写真が残っていないが)海外渡航ベテランのハム氏による海外コンベンションの現状と参加方法についてや、クリスケ氏による海外旅行記、着ぐるみ作成についてのパネルなど、単純に面白いだけではなく勉強になるパネルも散見できた。イベントそのものも他のコンベンションに倣う訳ではなく、独自のイベントを模索しているようでとても楽しめた。
おめでとう |
こちらはトークショー。ラジオパーソナリティよろしくイベント主催者のクリスケ氏と皆の人気者・団十郎氏が着ぐるみにまつわる話で場を盛り上げた。特にラジオ内容はリアルタイムでネットにブロードキャストされ、JMoFに参加していない人たちにも場の空気を提供するのに一役買った。
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「皆からのお便りコーナー」など、まるでラジオ番組! |
物販コーナーでは、Tシャツ、クリアファイル、バッジにタンブラーなど、様々な公式グッズが販売されていた。どれもクオリティが抜群に高い。
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どれも無茶苦茶クオリティが高い |
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皆がそれぞれに絵を描く |
完成した絵。大作だ! |
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様々なお知らせが勝手に増えていく |
夜のダンスパーティー。皆恥ずかしがって踊らないかなと思っていたら、一人また一人とダンスフロアに人が増えていき、結構な人数が夜の時間を楽しんでいた。
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やはりダンスフロアがないとね |
記念撮影。今回はなんと現地のローカル新聞社、滋賀彦根新聞社の編集長(山田さん)が自ら撮影にいらしてくれた。他にもサンルート彦根のスタッフさんも好奇の目で記念写真を撮影していた。余談だが、サンルート彦根の公式ブログには――余程インパクトが強かったのか――JMoFに関する記事が3つも掲載されていた。
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集合写真をパチリ |
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ブログはやや興奮気味に綴られている [1] [2] [3] |
その他、(残念ながら写真が残っていないが)海外渡航ベテランのハム氏による海外コンベンションの現状と参加方法についてや、クリスケ氏による海外旅行記、着ぐるみ作成についてのパネルなど、単純に面白いだけではなく勉強になるパネルも散見できた。イベントそのものも他のコンベンションに倣う訳ではなく、独自のイベントを模索しているようでとても楽しめた。
最後のシメ、着ぐるみで様々なパフォーマンスを展開するFurry's Actを始めとする着ぐるみ達によるショー。皆とてもキュートで時にハラハラする演技を見せてくれた。
また、あらぶる毛玉ことサーデュオン君も駆けつけてくれ、Anthrocon2012以来、実に7ヶ月ぶりの演舞を目の当たりにした。相変わらず彼の演技は手に汗を握る。
JMoFのイベント参加者は丁度100名。第一回目にして貫禄の三桁を叩きだした。
そんな訳で、JMoFは日本初のコンベンションとして大成功を収めた。個人的にも、着ぐるみも無いというのにこれ以上はないという位に一人で楽しんでしまった。
人々について
今回JMoFに参加するまで気になっていたことがあった。それはアメリカと日本の、いわゆるファーリーとケモナー(または着ぐるみ界隈)のイベントの取り方の違いである。
アメリカのコンベンションというものは、参加してみないとわからない独特な空気がある。この空気を言葉にするのはとても難しい。言うなればそれは、社会的に広くは受け入れられないファーリーというサブカルチャーを表現、共有、交流し、それが許容されるという安らぎにも似た安堵感である。
その中核に据えられるのは、やはり「交流」の一文字に尽きる。コンベンションは人との交流がメインであり、人とコミュニケーションを取らずして成り立たないのである。従って今回、世界の裏側で同
じようにコミュニケーションが図れるのか?という大きな疑問が常に頭にあった。
じようにコミュニケーションが図れるのか?という大きな疑問が常に頭にあった。
そんな老婆心ながら、少しでもイベントを盛り上げるため今回は人となるべく率先して話すようにした。出来る限り同じ所に固まらず、色々な人に話しかけ、名刺を渡す。単純なシーケンスだがそれだけで人との輪は面白いように繋がっていく。一人で遊びに来ている人とも、気さくに話しかければ会話は意外と弾むものだ。(もっとも今回はフランクを通り過ぎてちょっと浮かれすぎていたが……。)
中には「一人でいてもつまらない」と言っている人もいた。だが声をかけ、一緒に時間を過ごし、話し、笑うと帰る間際には独特の親近感が生まれ別れが惜しくなる。掲示板に何気なく書かれた「JMoF最高だった!」という一字一句がなんだかとても眩しく見えた。多くの出会いがあり、再会があり、邂逅があった。そのどの人とも別け隔てなく話すことが出来たように感じる。それがとても嬉しかった。
一つ明確になったことがある。それは――これは以前アンクル・カゲが仰った事でもあるが――擬人化文化を愛する人の心に国境は存在しないということだ。日本の着ぐるみ界隈の人たちと触れるのは初めてだったが、その誰もが心の根底に抱える「擬人化文化を愛する心」に国内外の概念はない。そんなことは当たり前なのだが、そのことを素敵に強く感じとることができた。
今回日本で初めて着ぐるみ系イベントに参加したが、その雰囲気は日本国外のイベントで感じるものと同一だった。いや、むしろ100人という相対的に小規模なコミュニティでの人と人との繋がりは一層強固に感じた。参加者全員と友達になれそうな雰囲気、そういう空気は今後参加者が増えていけば味わうのが難しくなるのかもしれない。そういう意味で今回この時期、このイベントに参加できて心底良かったと思う。
彦根について
また、今回のイベントはこの界隈の「内」と「外」の良好な関係も垣間見えた。その一つの例として彦根というロケーションそのものを挙げたい。
過去の記事でも触れたが、アメリカのコンベンションでは往々にして慈善事業への寄付金を募っている。これは道徳的に尊重されるのみならず、コンベンションそのものをファーリー・ファンダムの「自己満足」で終わらせない有意な行動であると評する。ファーリーは虐待に喘ぐ動物を・戦場に駆り出される犬を・地域の廃れた博物館を・世界の緑化運動を・身寄りのない猫を、イベントを楽しみながら支えているのだ。それは素晴らしいことではないだろうか?
このようなことが日本でも行われる事をいつも望んでいるが、当然、価値観の違いもあり抵抗を覚える人は少なくない。そのような現状に苦慮していたが、今回彦根のJMoFを見てもっとシンプルに人々の「自己完結していない」様を目の当たりにした。
それは言ってしまえば地域貢献である。今回の彦根というロケーションは、彦根城や琵琶湖を始めとする様々な観光スポットで知られ、多くの観光客を誘致している。特に地域マスコットのひこにゃんの知名度は凄まじく、ゆるキャラとして着ぐるみに通じる所が全くないわけでもない。実際イベントの合間に彦根城に赴く人、自転車を借りて琵琶湖までサイクリングに行く人、街をうろつきながら名物赤こんにゃくと近江牛に舌鼓を打つ人、様々な形でこの彦根というロケーションを楽しむ人が多く見受けられた。
然るにこのイベントが微少ながらも地域に経済効果をもたらし、内部完結していないことにとても意義がある様に思えた。もしJMoFがまた次回彦根で開催されるなら是非地域を巻き込んで何か催し事をして貰いたいものだ。(もちろん主前提として地域住人に迷惑がかからない範囲で、だが。しかしながら彦根新聞やサンルートブログで取り上げられたように、着ぐるみへの興味は案外多くの人の心を掴めるのかもしれない。)
然るにこのイベントが微少ながらも地域に経済効果をもたらし、内部完結していないことにとても意義がある様に思えた。もしJMoFがまた次回彦根で開催されるなら是非地域を巻き込んで何か催し事をして貰いたいものだ。(もちろん主前提として地域住人に迷惑がかからない範囲で、だが。しかしながら彦根新聞やサンルートブログで取り上げられたように、着ぐるみへの興味は案外多くの人の心を掴めるのかもしれない。)
総評
重ねになるがJMoFのイベント内容はどれも素晴らしいものだった。
もちろん、開催第一回の本コンベンションの規模や運営が必ずしもAnthroconやFurtherConfusion程洗練されている訳もない。だがコンベンションを通して、各小イベントからグッズ頒布、施設やタイムスケジュール、広報の細部に至るまで運営の手探りの努力が垣間見え、全体を通して満足いかないものは何一つなかった。初回でここまで内容を練るのは生半可な労力では無いはずだ。JMoFのスタッフには全く頭が下がる。
また、最後になってしまったが今回のイベント会場を提供してくれたサンルート彦根にも謝辞を述べたい。この前代未聞の着ぐるみイベントに場を提供してくれたサンルート彦根のスタッフの皆さんは、温情厚いサービスで多くの参加者をもてなしてくれた。
「お水は大丈夫ですか?もっと持ってきましょうか?」と逐一尋ねてくれたスタッフの方々には感謝の念が絶えない。ブログから見て取れるように、この特殊なイベントをそれなりに楽しんでもらえたようで、何よりである。
JMoFの次回開催がいつ、何処で開催されるか公式な発表は(2013年1月現在)まだない。だが、これっきりになることはないだろう。日本人がコンベンションの「楽しさ」を知ってしまった以上、コンベンション型イベントが今後共日本で開催されることに疑いようはない。
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日本の着ぐるみ界隈の一層の発展を願って! |
<写真提供:すからさん、JMoF Archive>
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