2012年6月30日土曜日

インタビュー: Anthrocon CEO、サミュエル・コンウェイ博士、そのまたの名をアンクル・カゲ


インタビュー: Anthrocon CEO、サミュエル・コンウェイ博士、そのまたの名をアンクル・カゲ

この記事はBoring Pittsburghに掲載されたものを許可を得て翻訳したものです

2012年7月20日 | 記事形式: インタビュー 
 


四日間の楽しい思い出、5000人以上の参加者、新記録を樹立したパレード、そして$20,000(160万円)もの金額をハロー・ブリー(訳注:ペンシルバニアのNPO法人)へと寄付……。皆さんも恐らくファーリーに関するニュースの一つや二つは耳にしているだろう。それもそのはず、開催されてから7年目を迎えるAnthrocon2012が例年通り今年もピッツバーグで開催されたのだ。読者の中には既にその意味する所を何となく分かっている人も少なくないだろう。そこで今日はイベントを率いるサミュエル・コンウェイ博士(詳しいことはWikipediaの彼の記事を参照)をお招きしてファーリー・ファンダムのミステリアスな実態と、(ピッツ)バーグにおける彼らについて詳しい話を伺ってみた。

アンクル・カゲ!ようやくお会いできましたね!
まず自己紹介をしていただけますか?


はいどうも!私はサミュエル・コンウェイ博士といい、Anthrocon Inc.の最高責任者を努めさせて頂いております。また、ファーリー・ファンダムにおいては1994年あたりから「アンクル・カゲ(Gは強く発音する)」という愛称で知られています。

Anthroconについてお聞かせ願えますか?


Anthroconはカートゥーン・アニマルを主題とした世界で最も大きいコンベンションです。アーティスト、コスプレイヤー、アニメーター、イラストレーター、作家、パフォーマー、或いは単純に (私達がそうするように) 立って喋る動物に魅せられた人達が総勢5000人以上も参加しています。参加者は世界中から集い、中にはオーストラリアや日本といった遥か遠方より来る人もいます。年齢幅も0歳から90歳と幅広く、参加者もグランド・ストリート(訳注:ピッツバーグの大手通)でどの時間でも見かけるような様々な職種の人々が集っています。例えば学生、教師、研究員、商人、医師、弁護士、消防士、警察官、軍人、秘書、企業幹部、政府高官……キリがないですね。

コンベンションはどうやってピッツバーグに?


簡単なことです。私達は招かれたのです。Anthroconはホームタウンのフィラデルフィアでは最早収集がつかないほど急速に成長して行き、そこにピッツバーグが私達を招き入れてくれたのです。もう戻ることはできませんね。この街の人達は信じられないほど優しく、David L. Lawrenceコンベンションセンターは私達の目的にはうってつけでした。ピッツバーグは私達を優しいハグで迎え入れてくれるアメリカで唯一の街でしょう。

イベントに参加するに、コスチュームを着る必要はありますか?



いえいえ、そんな事はありません!コスチュームは私達の一側面でしかありません。実際の所、参加者全体の20%しかコスチューム―私達は「ファースーツ(着ぐるみ)」と呼びますが―を持っていませんよ。もっとも、彼らはよく目立つのでどうやらそういう印象を抱く人が多いようですね。

どうしたらファーリーになれますか?


それはまるで「どうしたらコイン収集家になれるの?」と聞くようなものですね。まずは道端に落ちている綺麗な一セント硬貨を拾う所から始めましょう。イベントに参加することや、特定の商品を買うことがファーリーになる為に必要なわけじゃあありません。例えば猫に話しかけて、もし仮に一分でも猫があなたの言っていることを気にかけていると思うのならば、ひょっとしたらあなたはファーリーなのかもしれません。

お互い近くに住んでいるファーリー達はよく小さな集いをします。私達はこれに親しみを込め、「ファーミート」と呼びます。これらはインターネットの掲示板など、特にローカルな掲示板にて告知されます。特に私が好きなのは―特に謎めいているからなんですけど―ファーリー・ボウリングイベントですね。ローカルなファーリーの情報はwikifur.comを通して知ることができます。ピッツバーグにお住まいの方はpa-furry.orgから始めてみるのが良いでしょう。ペンシルバニア州のインターネットグループです。

ピッツバーガーや、その他の人々は
どこでファーを見つけることが出来るでしょう?


ああ、ファースーツを作るのに必要なファーですか?フェイクファーを卸しているチェーン店は少なく無いですよ。また、作り方をまとめたオンライン記事も少なくありません。

つまりファースーツのほとんどはお手製なんですか?


ほとんど全てのファースーツはお手製で、一つ一つが違います。棚から卸されたスーツ、というのはあまり聞きませんね。大多数は着る人が自身でデザインと製作の双方を手がけるか、ファースーツ製作のプロにスケッチや種族といった情報を渡して製作して貰うかのどちらかです。なので、全てが個人向けです。ファースーツはそういう意味でコスチュームよりも特別なのです。彼らは着ぐるみ一つ一つの人格を作り上げ、スーツを着るときもそのデザインと、スーツに投射する人格が完成していなくてはなりません。

そのようなコンセプトはどうやって生まれるんです?


それはファーリーにのみ成し得る技と言わざるをえないでしょう。ファーリー達は世界で最も創造的、想像的、そして独創的な人々なのです!誰しもが「ダルメシアンのコスチュームが欲しい」とは言えますが、ファーリーはそれでは満足できません。彼らならそのダルメシアンの性格を構築し、そこからスーツのデザインを作り上げるでしょう。筋肉質か、スリムか、トゥーニィ(アメコミ調)か、リアルか、メガネを掛けているか、どんなメガネか、傷があるか、どんな服を着るか、チャラい服装をしているか、がっしりと装備した消防士か、ああもちろん、体の模様もね。これらの要素の一つ一つがミッキーマウスの服装をつくり上げるのと同じくらい丁寧に考えられる訳です。小さな違いがミッキーを車輪を回る子ネズミとの違いを分け隔てるようにね。

⇒Anthroconのメッセージボードにはファースーツの作り方に関する詳細な記事や初心者向けの数十に及ぶリンクがある。チェックしてみよう。

でもお高いんでしょう?


高くしたければそうすることはできますよ。ファースーツを持っていなくても、イベントに参加できなくてもファーリーになることは出来るんですから。大事なのは想像力です。コンベンションに参加することは、旅費などを考慮すれば確かにちょっと値が張るかもしれません。ファースーツが欲しいならば、安いものなら数百ドル、高いものなら$10,000(約80万円)以上はかかります。

ファースーツを着ていないときはどうやってメンテナンスをするんですか?


私自身はメンテナンスが必要なファーは持っていませんが、多くのファースーターはスーツを手で洗っているようです。洗濯機で洗えるようなものもありますがね。基本的にはハンガーにかけて乾かし、適宜に消臭剤を散布して押入れの中でカビまみれになるのを防ぎます。

ハンドラー(付き添い)とは何ですか?またファーリーには必要ですか?


ハンドラーとはコスチュームを着ていないファースーツの付添人で、ファーリーが公に出るのを手助けします。アミューズメント施設などのマスコットキャラでも同様の付添人がつきますね。コーヒーを持った人や、尻尾を引っこ抜こうとするような輩($15,000(約120万円)のコスチュームを引っ張って馬鹿笑いするようなアホ)を追っ払う大切な存在です。小さな子どもが周りにいる場合は特に大事です。付添人は様々な語彙やボディーランゲージを用いてファースーツの視界の外に60cmの子供が居ることを知らせるでしょう。これは転倒の恐れを最小限に抑えてくれます。


ファースーターだけがこのような付添人を必要とするわけです。もし仮にファースーツを着ていない人がこれを必要とするなら、トニックでちょっと飲み過ぎてますね。

パイレーツパロット(現地のメジャーリーグチーム、ピッツバーグ・パイレーツの公式マスコットキャラ)やアイスバーグ(同市のホッケーチーム、ピッツバーグ・ペンギンズの公式マスコットキャラ)Anthroconでは受け入れられるでしょうか?受け入れられるほどファーリーじゃない?

彼らは擬人化された動物です。勿論受け入れられることでしょう!スティーリー・マックビーム(同市のアメリカンフットボールの公式マスコットキャラ。いかついおじさん)彼は動物じゃないですがファーリーはとても寛容なグループです。彼をガッカリはさせないでしょう。

ファーリーとゾンビならどっちが勝ちますか?

勿論ファーリーです。恐らく私達の90%程がブルークの「ゾンビ・サバイバル・ガイド」を読んでいます。言わずもがな、ゾンビの中でファーリーのことを詳しく知っている人は少ないでしょう。

バーグでファーリーと最も交流しやすい場所は?

今年までは「フェルナンド・カフェ」がそうだったでしょう……しかし彼は新たな旅路の一歩を踏み出したため、次点で「ハンロンズ・カフェ」か「トニック」のどちらかですかね。リバティ通りの前のすぐそこです。多くの人がハンロンズ・カフェのテラスやトニックのビストロテーブルでたむろしているファーリー達を見たことでしょう。

では最後に、ピッツバーグってつまらないですかね?

この街に来てからそう思ったことはありませんね!




では今年のAnthroconで素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた、日本のファースーツ・アクロバット、サーデュオンの動画をお楽しみください。
⇒AnthroconをTwitterでフォローしていいね!する
⇒詳しくはAnthrocon.orgへどうぞ
<元記事:Boring Pittsburgh 翻訳:イムハタ八里> 



2012年6月27日水曜日

Anthrocon 2012を振り返って



Anthrocon 2012を振り返って

世界最大のケモノイベントを追う


Anthrocon 2012


Anthroconの旗


Anthrocon(またはアンソロコン、アンスロコン)。それはアメリカ合衆国、ペンシルバニア州ピッツバーグで行われる世界で最大・最高のケモノ系総合イベントである。6月中旬に行われるこのイベントは、4~5日間ホテルやイベント会場を貸し切り、ぶっ続けで行われる。
既に多くの人々がそのイベント内容を残していると思うが、改めてここにイベントの概要と「2012年」が如何に他の年のAnthroconと違っていたかを小レポートの形で記したい。 Anthrocon自体はペンシルバニア州のNPO法人で、このイベントを束ねるのが大の日本好きであるサミュエル・コンウェイ博士=アンクル・カゲである。彼はこのイベントの最高責任者であり、イベントのマスコット的(?)存在でもあり、良き理解者・良きストーリーテラーでもあり、同時に化学分野で博士号を得た博士でもある。アンクル・カゲの名前は黒澤明監督の「影武者」より来ており(彼のHNは「カゲムシ・ゴロー」という)日本文化に対する造詣の深さが窺い知れる。


今までで最高のイベント

今年のAnthroconは例年に類を見ないほどの盛り上がりを見せた。 その盛り上がりようと言ったら、今この文章を読んでいる読者に申し訳無くなってしまうほどだ。もう今後二度と、2012年のAnthroconのように日本とアメリカが密に互いを影響しあう年などないのではないのではないだろうかと思ってしまうのもやむを得ない。(ただし、その予想は―嬉しいことに―毎年裏切られているので、ひょっとしたら来年はまたこれ以上の盛り上がりを見せるのかもしれない。現状それを想像するのはとても難しいが。) 今年のAnthroconは日本の影響がとても大きかった。ぱっと上げるだけで
  • TV番組、「さんまのまんま」で取り上げられた
  • 多くの日本人がはるばる日本より参加した
  • 日本のアーティストが多数、アートショー・オークションに参加した
  • 特別ゲストにサーデュオンが渡米した
……といった点が挙げられる。至る所に日本人の活躍が見られ、またケモノ文化の影響も随所に見ることが出来た。ケモノとファーリーの文化が融合していくのを見るのはとても感慨深い経験であった。
イムハタ公式マスコットキャラ・偽イムハタくんも参加
常に忙しく電話を掛けるその様は正しくジャパニーズ・ビジネスマン

「さんまのまんま」よりまんまちゃん来訪

カゲさんから「『さんまのまんま』という番組を知っているか?」という内容のメールが届いたのは4月の終わり頃だった。「さんまのまんま」は明石家さんまさんが司会を務めるフジテレビのトークバラエティ番組で、なんとそのグループから撮影のオファーが来たというのだ。日本のテレビ番組からあまり芳しい噂を聞いたことは無かった上、「さんまのまんま」はトーク番組。一体どこでどのように映像が使われるか分からないので、「どのように映像が使われるかだけは、しっかり確認した方がいい」という旨だけお伝えした。結論から言うと「さんまのまんま」のマスコット、「まんまちゃん」が世界を旅するというコンセプトの小コーナーが設けられているようで、そこに使われるフーテージの撮影にピッツバーグのAnthroconが大抜擢された、と言う話だった。

皆でポーズ
まんまちゃんは会場のあちこちに出現し、しきりに「私のことを知っていますか?」と書かれた看板を見せつけていた。とある人に「カビの生えたカーペットのようなモノ」と散々に言われてはいたものの、日本からはるばるやってきた来訪者に多くの人が好意的なコンタクトをとっていた。また、Anthroconがインターナショナルなイベントであることを知らせるため一役買うことが出来たのは大きい。カゲさんも開会式・閉会式双方でこの素晴らしいゲストについて言及し、良い形でオンエアされることを望んでいた。 着ぐるみ界隈が公共の電波に流れることに抵抗を感じる人も多少はいると思うが、カゲさんはメディアの露出にかなり繊細な方なので、しっかり手を打っていることだろう。そもそもまんまちゃん自体が着ぐるみキャラなので(さんまさんの甲高い笑い声と多少の毒気はあるかもしれないにせよ)悪いようにとられることはないだろう。

ディレクターの方とも短い間ではあったものの、ちゃんと話す機会があった。どうやら日本にもこのような着ぐるみイベントがあることは知らなかったようで、好意的な興味を持っているように見受けられた。何にせよオンエアまでは判断は出来ないが、良い形でAnthroconや着ぐるみ界隈が取り上げられることを望んでいる。 放送は7月下旬から8月に放送される「さんまのまんま特別版(完全版?)」にてオンエアされる予定。詳しい情報はさんまのまんま公式ページよりどうぞ。 (ちなみに、この情報は事前にディレクターの方に了承をとっているので包み隠さず公開している。むしろ率先して拡散してもらいたいとのこと。)