FurFright2012に参加する
コネチカット州クロムウェルで行われたハロウィン・ファーリーイベント
FurFright とは?
今回はコネチカット州クロムウェルで行われたキグルミ系イベント、FurFright(ファーフライト)に参加してきた。
2003年の初開催より、着実に参加人数を増やしている本イベントは、ケモノ系イベントの中でも中堅といった所だろう。参考までにFurFright2011の参加人数は1,485名。これは世界中のケモノイベントでも6位という規模の大きさである。(もっとも、人との繋がりや友達との交流という本イベントの趣向を鑑みて、参加人数に上限が設けられることもあった。)
本イベントの特色として10月の下旬、つまりハロウィンに併せたイベント内容が挙げられる。ファースーツは血糊や吸血鬼の牙でデコレーションされ、会場もコウモリやカボチャで彩られる。パレードにも何故かゾンビや他のモンスターが紛れ込み、夜は大画面でロッキー・ホラー・ピクチャー・ショーを楽しむ。FurFrightという名称もFur (毛) とFright (恐怖) を合わせた造語であり、イベント自体もハロウィンに合わせた趣向になっているのである。
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カボチャのデコレーションが。 |
他のイベントと同じく、今回は3回目の参加となった。Chill-Con (まったり系コンベンション) と名高いこのイベント会場に再び訪れたが……。
トラブル続きのコンベンション
FurFright2012を評する語句は余りにも多すぎる。
HurriCon、FireCon、FireFright、StairCon、ExtinguisherCon、etc…そしてその多くは好意的な内容とは言い難いだろう。今回のコンベンションは何故か多くのトラブルに見舞われた。一体どうしてこうなってしまったのか?今一度このイベントであったことを振り返ってみたい。
不穏な滑り出し:コネチカット州クロムウェルへ
FurFrightが行われるコネチカット州はマサチューセッツ州とニューヨーク州の間という好ロケーションで、ボストンからは僅かに2時間。コンピュータのAC電源を忘れてしまうという何とも間の抜けたミスもあったが予定どおりクロムウェルへ到着する。
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この時期の東海岸は木々が色づいて美しい |
週末はずっと写真のようなどんよりとした天気だった。
ホテル内部
イベント会場は去年と同じくクロウンプラザホテルと相成った。ホテル部屋が中庭に面しており、その中庭にはプールと巨大なビデオスクリーンがあるというラグジュアリーな内装である。
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ホテル部屋は中庭に面している |
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ホテルのフロント |
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ホテル部屋。今回はこの部屋に5人もすし詰めになった。自分は主に床で寝た。 |
開会式は食事時とバッティングしたので軽く見る程度にとどめた。何はともあれいよいよFurFright2012の開催である。
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今までのFurFrightと題されたビデオが流された。 |
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掲示板コーナーもこのとおり。 様々なネットミームを模したネタが書かれている。 |
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自分も描いて貼ってみた(後に誰かにとられた) |
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イベント紙。結構凝った作りになっている。 |
ゲームコーナー
ゲームコーナーが充実しているのもこのコンベンションの特色といえる。ピンボールマシンやネオジオの筐体(!) が配置され、参加者はいつでも無料で遊ぶことができる。今年はポップンミュージックやDDRのコントローラーもお目見えして、一段と盛り上がっていた。
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ネオジオの筐体。どこから持ってきたのだろう? |
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ポップンミュージックまである! |
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こちらはピンボール台。もはや何でもありだ。 |
くじ引き&オークションコーナー
AnthroconやFA:United と同じく、FurFrightにもくじ引きとオークションコーナーが設けられていた。どちらも慈善事業(War Dog United States War Dogs Association――後述)の為のもので、売上は直接支援団体に支払われる。
くじ引きはその場で勝者が決まるのではなく、投票券を購入し目的の商品に投票する。日曜日の朝にそれぞれの商品から勝者が一人ずつ決定する。商品は参加者が持ち寄ってきたものでとてもユニークだ。
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カナダ産コカ・コーラ。 甘味料にとうもろこし由来のブドウ糖ではなくサトウキビの砂糖を用いている。 このため後味が格段に良く、ちょっとした嗜好品になっているのだ。 |
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ピンボールマシン。 一体なぜこんなものが出品されているのか!? |
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お楽しみボックス。 何が入っているのか最後まで分からなかった。 |
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ドラゴンのフィギュアセット。 これは欲しい!! |
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でかいハリボーグミ。 |
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キグルミも出品されていた。 そういえばケモノイベントだった。 |
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珍しい、映画「ボルト」のトレイラーフィルム。 どこから入手したのだろう |
カーイベント
FurFright には伝統的に (?) カーショーがあるらしく、今回は初めて参加してみた。とは言ってもイベント内容はそこまで凝ったものでもない。乗ってきた車のボンネットをパカっと開き、適度にデコレートし観客に見せるというシンプルなもの。参加者は気に入った車に投票することができ、投票の最も多かった車が優勝だ。
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動いてるのが不思議な位の車も登場 |
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この車のナンバープレートにはCUBBI(幼獣・ケモショタ・ケモロリ等の意)と書かれている。 |
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轢かれてる轢かれてる! |
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日産ダットサン。もはや骨董品だ。 |
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コレがトロフィー。勝者に贈られる。 |
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優勝者の発表! |
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この車が優勝者だ! |
夜
夜は例によって例のごとく、お酒を呑んだり絵を描いたりしてまったりと過ごす。リカー類はたっぷり持ってきたので飲み物に事欠くことはない。夕飯は皆でお金を出してピザを食べる。「ノー・アンチョビ」というピンポイントなネーミングのピザ屋が近くにあったので敢えてアンチョビピザを頼んでみる。
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アンチョビピザは好き嫌いが激しく分かれ、面白かった。 |
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ちなみにコレで一人頭$5~$6くらいである。安いものだ。 |
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無駄に沢山のリカーを持ってきた (最終日までには殆ど空っぽになったが) |
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ショットグラスのまま売られていたリカー。 甘くて美味い。 |
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The Zooでお絵かきをする。 絵を描いていると話しかけられ、バッジ依頼をされたりする。 こうして友達の輪は広がっていくのだ。 |
パレード
イベントではお約束、パレードももちろん敢行された。ホテル内を所狭しとキグルミたちが闊歩する。今回はハロウィンイベントということもあり、キグルミは全く関係ない仮装やゾンビ達も勝手にパレードに混ざっており、中々混沌としたパレードだった。だがその適当さが良いのである。
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こわっ |
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行進するファースーツ達 |
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クオリティ高いフライヤさん |
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すれ違いざまハイタッチ。可愛らしい。 |
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だから怖いって!!! |
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ゾンビも参戦 |
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外の記念撮影コーナーでは キグルミたちがごった返していた。 |
パネル
ここはパネル。個人がプレゼンテーションや寸劇や講座、その他イベントを行う。パネル内容も「絵の描き方」、「ファーリーコンベンションを目一杯楽しむには?」あるいは「ファースーツの作り方」といったものから「ファーリーラジオの作り方」、「ファーリー電車愛好会の友」といったユニークなものまで様々だ。(過去のイベントで触れることはなかったがAnthroconやFA:United でも同様のスペースが設けられていた。)
今回参加したのは”Draw or Die”というパネル。これはレクリエーションパネルで、ちょっとしたゲームの趣向となっている。
白紙のコピー用紙を四つ折りにして番号を振り、出されたお題にそって絵を描く。15分の制限時間が過ぎたらそれを別の人に回し、次のお題でコマに絵を描く。こうして4順すれば内容のぶっ飛んだ4コマ漫画が出来上がっているという趣向だ。
ちなみにお題は1コマ目からそれぞれ「スニーカー」、「バナナ」、「イカ」、「火」となった。
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自分も参加。三コマ目を描く。 |
ちなみに最後に全員が出来上がった作品に一票ずつ投じ、優勝作品を決めた。それがこちら:
無理やり江南スタイルを盛り込む強引っぷりと、イカの適材適所っぷりが好まれたようだ。優勝者四人にはお菓子が振舞われた。
ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー
そしてお楽しみ、究極のカルト映画ロッキー・ホラー・ショーのお時間である。
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中庭の大画面スクリーンに映し出された フランクン・フルター博士! |
スクリーンの前では映画内容に併せた寸劇(またの名を茶番)が演じられる。
余談だがこのロッキー・ホラー・ショー、カルト映画の中でも最高にユニークな作品だ。40年近く前の映画なのにエキセントリックな衣装に音楽、最高の演技を見せる愛されて止まない俳優たち、そしてそれらを打ち消すように馬鹿馬鹿しい内容と陳腐なセリフ回し!ドラッグ、トランスベスタイト (いわゆる異性装) 、バイセクシュアルやホモセクシュアル、そのたありとあらゆるアンモラルさをふんだんに用いた本作品は、多くの人を魅了して未だ色褪せないのである。
特にオーディエンスが場面に合わせて「お約束」の台詞を叫んだり、野次を飛ばしたり、米を投げたり、新聞紙を被ったり、画面をクルクル回したり支えたり、プールに飛び込んだり、と参加者が一緒に参加する本映画は何度観ても新鮮だ。リアルで行われるニコニコ動画といえば多少はその雰囲気が伝わるかもしれない。
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中々リッチなイベントの楽しみ方ではないだろうか? |
映画を堪能し、この日もThe Zooでたっぷり絵を描き、お酒を飲んだ。夜のお話タイムも盛り上がり(ルームメイトと日本のゲームやアニメ業界について色々語った)、床についたのは午前3時くらいだった。やや遅めの就寝だったがイベントということもあり、クタクタになってベッドに潜り込んだ。(厳密に言えばブランケットに。) 酔も良い感じに回って程なく眠気に襲われ、ウトウトと夢の世界に片足を突っ込んでいた時である。
それは突然やって来た。
火災発生
けたたましいアラームが鳴り響き、部屋の全員が飛び起きた。誰がという訳でもなく、ドアを開けた。火事のようだ。
そこからはあっという間だった。手荷物をまとめて部屋を飛び出す。階段は人でいっぱいだ。かわいい動物パジャマを着た小さな男の子を抱いた母親、寄り添うカップル、さっきまで飲んでいたのか――顔を赤くした男性等など、沢山の人々が不安な面持ちで階段を降りていく。行き先を指示するイベントスタッフの表情にも緊張が走る。
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不安。 |
ホテル周りは混迷を極めていた。数百名に及ぶ参加者が不満そうに屯する。スタッフはなるべく皆をホテルから離れさせようと強い語調で彼らを先導し、程なくして消防車がけたたましいサイレンを鳴らしやって来る。
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寄り添う人々 |
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到着する消防車 |
今年は比較的温かい気候に恵まれたとはいえ、10月の下旬である。やはりTシャツ一枚は寒い。しかもサンダルなど持ってきていないから裸足に革靴だ。足元がぐちゃぐちゃして気持ち悪い。
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いったい何が起きたのだろうか? |
取り敢えず同じホテルに宿泊していた友達は皆無事な様子。眠そうな眼をこすりこすり、様々な憶測で盛り上がっていた。
ちなみにFoursquare(レストランやお店を訪れるとポイントが加算されるソーシャルゲーム)には速攻でFire Alarm @ FurFright 2012というベニューが出現していた。(FurFright 2012 Pissed-Off Fire Alarm Party (FurFright2012『ブチギレ』火災報知器パーティ) という名称のゲイバーも。)
また、多くのファーリーがホテルを着の身着のまま飛び出してきたわけだが、意外にも妙な格好をしている人は少なかった。(ファースーツ姿や着ぐるみパジャマに抱きぐるみを抱えているファーリーは何人かいたが。)ひょっとするとオムツ一丁なんてとんでもない格好で飛び出してくる人がいるのかと思ったのだが……。等と思っていたら逆に「あのイムハタがTシャツというとんでもなくだらしない格好している!!」と友達に笑われた。そういえば常に襟付きシャツ姿でいたから逆にTシャツ姿で人前に出ることはなかったのである。御鉢が回るとはこのことだ。
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着の身着のまま飛び出してきた人多数。 |
結局朝の5時近くまで外に追い出されていた。部屋に戻った時には窓の外がうっすら明るいできた位である。
気になる火災の元だが、実際は火ではなくてその逆、消化器の消火剤を探知したのが原因だったようだ。どういうことかというと、盛り上がった幾名かのファーリーが夜の空気で悪乗りし、ホテルの消化器を盗みそれを非常階段にぶちまけたらしい。全くいい迷惑だ。
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これと同型の消化器をぶっ放したらしい。 「ファーリーはみんなダメにする(furry ruin everything)」とはよく言ったものだ。 |
部屋に戻って取り敢えず床についたが、興奮もあり中々眠れず、結局寝坊して翌日は11時からの活動となった。
最終日
イベントもいよいよ大詰めだが、何故か会場は空っぽ、ムードもどこか消沈気味だ。それもその筈、早朝に叩き起こされたのみならずこれからハリケーンが来るというのだから。
ハリケーン・サンディがいよいよ襲来する為ニューヨーク州の一部の橋が通行止めになるらしい。ハイウェイも閉鎖するかもしれないという前代未聞のこの事態を受け、運営側が西へ帰るグループに早急に荷物をまとめるように奨めたのである。
まだディーラーズルームは閉まってもいないのに早々に荷物をまとめ退散してしまう人達。月曜日までの滞在予定を変更し、日曜日の夜に帰宅してしまう人も少なくない。
天災なのだから仕方ないとはいえ、「何でこんな時期に……」と一同がっくりと肩を落とした。
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主催者テーブルの上には 「俺達はFurFright2012を生き延びた!!」と 書かれた消化器が。 |
閉会式も(いつもの哀しみムードに増して)寂しいムードに包まれていた。
テーブルの上には”We Survived FurFright!(俺達はFurFrightを生き延びた)”とラベルに書かれた消化器が置かれていた。犯人は捕まっていないらしい。迷惑千万だ。
今回も多額の寄付金が集まった。(まだ公式には寄付総額が発表されていない。)この寄付金はUnited States War Dogs Association (USWarDogs) に寄付される。この団体は珍しい軍用犬の支援団体で、様々な形で戦場に送られた犬達を救けている。具体的な活動内容としては警察犬や救助犬の支援をしたり、過去の戦争で犠牲になった軍用犬を追悼しその尊い犠牲を忘れぬよう記念碑を築いたり、戦線を退いた軍犬に快適な家庭環境を提供したりしているのである。
帰路へ
そんな訳で台風を目前に、翌日足早にボストンへと帰った。途中雷雨に見舞われたがボストンに着く頃には強風にもまれる程度に収まった。停電しなかったのが幸いといえよう。
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嵐の前の静けさといったところ |
慌てて帰ったものだから、PCD(コンベンション後鬱)になる暇もない。家に到着してもなんだかフワフワした気分で実感が中々沸かなかった。来年はゆっくりしたいものだ。
総評
今年のFurFrightは火事騒ぎにハリケーンと(加えて友達との間にいざこざもあったり)トラブルが続き、去年や一昨年のFurFrightと比べて――残念なことに――遺憾が残る結果となってしまった。特に残念なのがそのどれもがFurFright運営に何ら落ち度がないところである。
ハリケーンのような自然災害は予期できるものでもなかったし、ましてや火事騒ぎ等運営側が一番迷惑を被った所だろう。果たして来年もこのホテルに戻ってこれるのか心配なところである。
それでも数年ぶりに友達と再会できたりもして、一緒に映画を見たりお絵かきをしたりと、楽しいことは沢山あった。悲喜こもごもといったところか。
……それにしても火事騒ぎを引き起こした輩は一体何を考えていたのだろうか。折角運営側が精一杯良いイベントにしようと頑張ってきたのに、これでは台無しである。あんまりといえばあんまりな。
たとえファーリーのイメージの良化に勤めても、ファーリー自体がその全てを台無しにしてしまうようなことをしてしまっては元も子もない。これは日本のケモナーやキグルミ界隈でも決して他人事とは言えないのではないだろうか?
特に人口が急激に増えているこの界隈では、(ここまで極端な事はなくても)ちょっとした事でもイメージを損ねやすい。私自身決して人徳者を気取るつもりはないが、海外でケモナーを名乗る以上身の振り方には神経を払っているつもりだ。
変わり者の多いこの界隈だからこそ(そしてそれはこの界隈の美徳でもあるのだ!)今回の一件を他山の石としてケモナーやキグルミ界隈の一人ひとりにモラルと常識を求めたいものである。